『元オバマ大統領SSが語る、ホワイトハウス過酷勤務の実態』
週プレNEWSより

http://news.livedoor.com/lite/article_detail/7957004/

(文参照)
単なるボディガードではなく、多岐にわたる危機管理能力を求められる頭脳エリート集団がSS=シークレットサービスだ。普段秘められたその内実を、オバマ大統領の第一期まで側近で仕えた影の男が明かす。揺れる世界情勢下でますます複雑、高度化する、その実像を独占取材で証言!
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■“電子レンジの中”のようなホワイトハウス

米国の心臓部、ワシントンにあるホワイトハウス。歴代米国大統領が執務を行なうオーバルオフィスの下にはあまり知られていない部屋がある。シークレットサービス(以下、SS)の活動の中心となるPEOC(大統領危機管理センター)である。

彼らの“存在”や“任務”についてはその名のとおり“シークレット”でほとんど表には出てこない。ブッシュ、オバマ大統領の警護を5年にわたって担い、世界の激動の歴史に関わってきたダン・ボンジーノ氏はまさに影の目撃者。まずはSSエージェントになったキッカケから語ってもらおう。

「サングラスをかけて表情を変えずクールで、強靱な肉体と精神を持つ彼らは幼少の頃から私の憧れの的だった。NYPD(ニューヨーク市警)を経てSSに入ったのだが、警官と似た仕事の要素に加え、SSには護衛するというもうひとつの顔があることに惹かれました。オフィスに出勤すると『この世には大統領になりたいと思う人間と、大統領を守る人間になりたいと思う2種類のタイプがいる』と書かれたポスターがあって、当然、私は後者だったが、この言葉にまずはシビレたね」

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ボンジーノ氏の最初の仕事は、後に上院議員や国務長官になるクリントン大統領の妻、ヒラリー(ファーストレディ)の警護で、任地はニューヨーク。SSはワシントンだけでなく米国内だけで50ヵ所以上にオフィスを構える。大統領が遊説などで訪れた際にバックアップする役割もあるためだ。

しかしSSも生身の人間。無表情に任務を遂行しつつプレッシャーやストレスはハンパないはず?

「そういう意味では、SSをリアルに描いているのはクリント・イーストウッド主演の『ザ・シークレット・サービス』(93年)だね。主人公の彼は仕事のときは表情を顔に出さないが、その裏で人間の喜びや苦しみ、職務のつらさが非常によく描かれている。少なくとも5回は観た大好きな映画だ(笑)」

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いずれにせよ肉体的にも精神的にもタフガイじゃなければやっていけない、と。それでもホワイトハウスでの勤務は過酷らしい。

「いつもなぜか暑いんだ。空調が効いていないのか(苦笑)、人々のエネルギーが集中しているからか理由はよくわからないが、よく仲間とジョークで『電子レンジの中のようだぜ』と言っていた。その中でウールのダークスーツを着て、その下には防弾ジャケット、拳銃とマガジン(弾倉)、無線や手錠などを装備すると15kgくらいになるから本当に大変だよ」

それでさりげなく任務にあたっているとは! 勤務時間などは?

「短くて8時間。でもその間、1分たりとも気が抜けない。『明日のデートはどうしよう』なんて考えた瞬間、何かが起きたらオシマイだからね。気を張り詰めたその時間の緊張が続くのはとてもつらい。ある年の夏、オバマ大統領がシカゴで7、8ヵ所回り演説を行なったときには16時間連続で護衛をしたんだが、ひどく暑い日だった。装備をして動き回るのも大変だけど、じっと立っていて神経を張り巡らすのも大変。失神して倒れるかと思ったけどポカリスエットを飲んで耐え忍んだよ(笑)」

米国人は「ゲータレード」かと思いきや「ポカリじゃないとダメなんだ。私はこだわり性だからSSになったのだと思う」とほほえむ素顔には親しみが垣間見られた。

■エアフォースワン、真っ暗闇のアフガン

では武器や装備もこだわりのセレクトなのか? シグザウアーのP229拳銃やFN-P90短機関銃、狙撃銃のM24など最新式のものを携行していたのだろうか。

「機密なんだが(笑)。任務によって変わるし、室内ではシグとか、大統領が車で移動するときはM16自動小銃を小型化したAR-15ピストルやH&KのMP5、ウージーなどのサブマシンガン。もちろんショットガン(スラグ弾やバックショット弾)も携行した。要は状況に応じて銃や弾丸の種類もホローポイント弾などに変える。さまざまな種類を使うので、全部徹底したトレーニングを行なうんだ。狙撃銃だけはわれわれ特別捜査官ではなくSSの制服組がカスタムメイドのものを使っていた」

もっとも、過去も含めてSSがこれらの銃器を実用した記憶はないという。なぜなら、そういう事態が起きてからでは遅いからだ。危機を未然に防ぐことこそ最も重要で、そのためには“頭脳戦”となる。大統領が一歩でもホワイトハウスを出たら臨機応変、その場に応じて考え動くことが肝要だ。

「例えば、危機管理においてプランAがダメならプランBに変更、せいぜいCくらいまで、というのを、SSはプランZ、欲を言えばそれ以上の想定をしなければならない。あらかじめ大統領が行く場所の危険を事前にクリアにする準備班、そして現場での同行班とあり完璧なシミュレーションをしても何が起きるかわからないからだ」

当然、大統領が海外に出れば、さらに警護は困難を極める。

「ブッシュ大統領が2005年5月にグルジアのトビリシに演説に行ったときのことだ。大群衆が金属探知機を飛び越えて近づき、ひとりが赤いタオルに巻いた手榴弾を投げたんだ。運良く不発だったが爆発する可能性だって当然あった。私はそのときメリーランド州でSSの教官をやっており現場にはいなかったが、現実に起きた事件だよ。詳細はこれ以上言えないがショッキングな出来事だった」

自身の最も印象深い体験は2010年12月3日、オバマ大統領の極秘アフガニスタン訪問だ。

「誰にも明かさずにエアフォースワン(大統領専用機)でカブール近郊のバグラム空軍基地まで飛んだのだが、戦時下でタリバンが跋扈(ばっこ)しており、いつミサイルが飛んでくるかわからなかった。さらに当時のカルザイ大統領に会うためカブールまで飛ぶはずのヘリは砂嵐で離陸できず。結局、滑走路にライト(誘導灯)をつけるのも危険なため真っ暗闇の中をエアフォースワンでなんとか離陸し引き返した。今思い出しても非常に危険なミッションだった」

大統領を直接警護するPPD(Presiential Protection Division=大統領護衛部門)には最長5年しか勤務できないという。それだけ過酷な任務なのだ。SS内の別の部署での仕事であれば継続はできるが、「激動の時代だったが大統領の“盾”となる任務を全うして自分としては十分満足だ」とボンジーノ氏は現場を離れ安堵する。


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だが、困難な時代における新しい世界秩序の始まりを受け、米国大統領とともにSSもますます多様な試練に晒されるはずだ。

「私は警察学校もSSアカデミーもかなりいい成績で卒業したが、NY時代からずっとライバルがいてね、常に2番目。現在もSSで勤務しているのでフルネームは言えないが1番はスーザンという女性だった。彼女は対生物・化学兵器の専門家として活躍している。SSの仕事は6つの部門に大別され、(1)銃火器対策、(2)核、生物・化学兵器対策、(3)車載やIED(路肩)爆弾対策、(4)空からの侵入対策、(5)火炎瓶や火災対策、そして最後が大統領が心臓発作などを起こしたときの対策、と分かれている。どんな状況でもわれわれがパニックになれば非常に危険な状態だから絶えずシミュレートしておかねばならない」

超エリート集団であるSSだが時代の流れとともに常に変化し続け、それゆえ「間違いを認めることを恐れない」ともいう。

「例えばレーガン大統領暗殺未遂事件を教訓に建物から車への移動は敵から見えないようテントのようなカバーで覆い、人目に触れさせないようになった。9・11同時多発テロ事件は大統領個人への攻撃ではなく国家への攻撃だったが、大統領護衛に関しても非常に緊張感が高まった。上空からも地下からも攻撃を受けるのではないかという恐怖はSSにさらに広い視野や嗅覚を要求しているという認識を強くしたんだ」

そして、たとえ大統領が代わり、肌の色や年齢、さらには政治理念が自らと異なっていたとしても、矢面に立って「無条件で純粋に守りぬく」ことこそが「誇り」だとボンジーノ氏は最後に語った。

SSの戦いに終わりはない。

(取材・文/世良光弘 撮影/五十嵐和博 取材協力/バークリー千恵)


Dan Bongino(ダン・ボンジーノ)
1995年、NYPDの実習生となり、97年に警察学校を卒業、潜入捜査など輝かしい実績を残す。その間、ニューヨーク大学で心理学や行動学の修士を取得。99年にSSアカデミーを出て正式配属。02年から大統領警護に就く。38歳。Twitter:dbongino、Facebook: danbongino




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