備忘録として残しておきます。



「財界にっぽん」2011年11月号
藤原肇・本澤二郎が語る日本の現在と未来
-松下政経塾政権のスタートとその真相-

http://fujiwaraha01.web.fc2.com/fujiwara/article/zaikai111102.html


「財界にっぽん」2011年12月号より
藤原肇・本澤二郎 瀕死の日本いかに救うか-総括なき国の行末には未来はない

http://fujiwaraha01.web.fc2.com/fujiwara/article/zaikai111203.html





(以下転載)

-松下政経塾政権の
スタートとその真相-


本澤
実は今日、僕は一番最初に聞きたいことがあるんです。日本人に聞いてもなかなか分からないことなんですが、今年は外国へは一度、上海にしか行ってないんです。それで秋から暮れにかけて一度行きたいと思っているんです。ところが、今、超円高にもかかわらず格安のチケットが全然、格安じゃない。確かにガソリンも高騰したまま。しかし、超円高がそれをカバーしているはずなんですが燃油サーチャージとかいってべらぼうに高い。このカラクリが何なのか。恐らく石油業界も含めていろんな状況を上手く利用して相当ボロ儲けしているのではないかと疑っているのですが、残念ながら僕は経済が分からないので(笑)教えていただきたい。

藤原 
カラクリがあるところよりも、日本経済は完全に死に体ですから円高還元をするゆとりがないのです。ただ、一見、金があるように見えるのは、企業がホールディング会社になって、例えば武田製薬が1兆円以上のスイスの会社を買収したりしているが、あれは自分の金ではない。ファンドの金を動かしているだけで虚飾にすぎない。
 経済の話は後半に譲って、今年の民主党の代表選挙の結果、松下政経塾の一期生が首相になったことについて、あなたから教えてもらわなければいけない (笑)。というのも、僕はこの国に来た時には新聞・テレビは一切見ないことにしている。余計なゴミが入っているので一週間滞在して外国に行くと、元に戻るのに三週間、三倍の時間がかかってしまう。

本澤
それは正解ですよ。僕も新聞を読むのを止めて七~八年になります。読むと訳が分からなくなってしまう。一般国民を誑かす内容なんですね。その結果、今年の代表選で野田(佳彦)が代表になった。
 つまり、野田総理大臣をつくるために海江田(万里)を叩きまくった。それで見事に 〝どじょう内閣″ができ、〝よいしょ記事″ を書きまくっている。それまで野田は財務大臣として何もしていないばかりか、円高に対して4兆円も市場介入しても全然効果なし。彼は落第生ですよ。その落第生をここ数日間、新聞・テレビは褒め称えた記事を流している。

藤原 
松下政経塾から初めて首相が生まれたことはとてつもない大変なことだと僕は思う。

本澤
そうですね。

藤原 
これはまさに1980年代に中曽根が首相になった時、日本にファシスト革命が始まると、非常に危機感を持ちましたが、それに匹敵する危機感を持っている。

◆落第生首相が誕生

本澤 
藤原さんの先見の明は凄いですよ。正直なところ、僕は1972年中ごろから中曽根番の記者をやってまして、ある意味で中曽根を側面から支援していた。
 当時、彼の最大の弱点は、青年将校上がりで軍国主義思想の持ち主ですから財界の支持が全くなかった。それで「経済界にもっとテコ入れしなければ大成できませんよ」とか「土光(敏夫)さんを頂点とする経済界が今一番願っていることは行財政改革だから、行政改革を必死にやれば財界と仲良くなれますよ」みたいなことを、僕なんか教えていた方なんですよ。
 そんなことで彼がいざ総理になった頃まではまだ安心していた。ところがワシントンに行ったとたんに土下座して「日本は不沈空母です」と。ソ連と戦争をしても日本は大丈夫ですよみたいなことをレーガンの前でやっちゃった。それで愕然とし、以来、反中曽根になった。

藤原 
そうですか。僕は1970年代から中曽根は非常に危険な人物とみていた。特に福田(越夫)内閣が誕生した時に、ある雑誌に『60年安保とファシスト革命の失われた鎖の輪』というタイトルで、福田内閣はファシスト革命の中間点と位置づけ、その後のファシスト革命を中曽根がやると書いた。
 実は私、ファシズムの勉強をするためにヨーロッパに行った。ファシズムとナチズムに関しては日本で最も勉強した一人です。

本澤 
そうですか。僕はすっかり油断していたんですね。

藤原 
しかし、松下政経塾内閣ができたことについて、日本ではあなたが一番危機感を持っており、その辺りの背景をいろいろお聞きしたい。

本澤 
松下政経塾は、これはまさにメディア戦略の成果といえます。多くの国民が尊敬している 〝経営の神様″ が創った政経塾ということで僕もそれにだまされていた人間の一人で、当初は悪いイメージはまったくなかった。ところが、十年位前から「はてな?」となってきた。民主党内で彼等OBが中枢を占めるようになってから、話す内容、行動が可成りファシスト的で、調べる必要があると思った。
 調べていくと、松下幸之助が70億円で塾を立ち上げている。僕は政治に影響力を行使できる巨大企業を 〝財閥″ と呼んでいるが、したがって、塾は松下財閥そのもので、その財閥の政治部門です。その一財閥の政治部門が政権を牛耳っているというのは、戦前、戦後を通して初めてのことです。かつて財閥は侵略戦争をやり戦後解体されたから、彼等はじっと沈黙して目立たないようにしていた。今は財閥から初めて経団連会長が出ていますが、ともかく一財閥が日本の政権を牛耳ったというのは、空前絶後の非常事態といえる。最初は市民派ということで菅内閣を傀儡で使っていたが、今度は正真正銘の一期生が総理大臣になった。

藤原 
実は、僕は松下政経塾というかPHPとは30年以上の長い付き合い歴史がありました。

本澤 
えー、その辺のことを詳しく聞きたいですね。

藤原 
PHPは僕がエネルギー問題に詳しいということで、「VOICE」 の副編集長が読者だったこともあり、「創刊号を出したから 21世紀問題について、寄稿して欲しい」と言ってきた。そこで記事を書く暇はないが、21世紀は老人問題が大事だから、対談ならOK」と返事してある作家と対談した。そうしたら、2000年の12月号まで25年以上も、航空便で毎月アメリカまで送ってきた。凄い資金量と工作能力だと手の内が良く分かったが、 PHP研究所は若い研究者を「VOICE」にスカウトして、次に「諸君」や「正論」に送り込む役割を演じていたのです。

本澤 
PHPは松下政経塾の司令塔で、「VOICE」はその機関誌ですね。

藤原 
その通りです。それから五年後くらい経った時に、PHPの総帥の江口克彦という人が、帰国する時に会いたいと連絡して来た。そして、彼が京都から出てきて対談をしたが、この段階で外国のジャーナリストから江口という人が、松下幸之助の隠し子だという話を聞いていたのです。

本澤 
その話は僕も聞いたことがある。まさに幸之助の側近中の側近なんでしょうね。だからPHPが政経塾の指令塔で、前原や野田らに対して指令が出ている。

◆カルト集団PHP

藤原 
彼に会った時、いつも雑誌を送ってくれていることのお礼を述べた後、僕の目から見ると、毎号松下幸之助の記名記事が載っているが、5~6人の若い人が書いていることはすぐに分かる。どうして松下さんの隣りに若い人を育てるためにも名前を載せてあげないのか、といった批判的なことを言ったら、神様を批判する藤原は危険人物ということで、対談はボツになった。

本澤 
そうですか。

藤原 
それでもVOICEは30年近くも、毎号送ってきましたね。

本澤 
江口氏とは今も交流はあるのですか。

藤原 
ないないー。
 僕は松下幸之助が政経塾を作った段階で、外国の諜報機関の人物から、松下幸之助が青山にマンションを借りてある男を住まわせ、その母親が一緒に住んでいるが、その母親は松下のオンナではないという話まで取っていた。その若衆宿が松下政経塾の始まりだったとか。
 しかも中曽根内閣の時に京都大学の高坂正尭教授が政府委員会の委員長や委員を数多くやっていた。

本澤
そうですね。

藤原 
彼が東京に出てきた理由は男漁り。この情報も外国の諜報機関の連中からです。

本澤 
(驚きながら) そういうことっだったのですか。

藤原 
米国というより世界では、諜報機関においては強請るタネはホモ人脈が当り前になっている。

本澤 
ほうー。

藤原 
高坂の弟子が前原でしょう。

本澤 
そうです。前原は高坂教授に言われて松下政経塾に行ったと言われています。

藤原 
高坂はエイズで亡くなっていて、京都では知る人ぞ知るですが、日本のメディアは一切報道していない。実は、中曽根政権時代に海軍短現人脈が目立ち、男の友情が取り沙汰されたことがある。男の友情は秘密を守る口の堅さに由来し、情報関係における歴史のキイワードです。『スパイキャッチャー』などを読めば、ホモ人脈が重要な役割を演じていて、KGB,MI6,CIAといった諜報機関を支配していた。そのことは『平成幕末のダイアグノシス』の中にヒントとして書いて置いた。だが、日本の皆さんは、日本の裏社会のことは暴力団、同和、カルトの3つしか言っていないが、もう一つホモというのがある。これは世界で通用する言葉だが、日本では分かっていても表には出てこない。

本澤 
いや、全然分からないですね。

藤原 
それは今、日本にはろくな情報機関がいないからだ。25年位い前は有楽町の電気ビルに優秀な外国の新聞記者、情報機関がいっぱいいたが、そういう連中から情報を取ると全部出てくる。しかし日本人の記者は、外国の情報機関を相手に情報を採れる人がいなかった。だから僕は今から30年前に石油事業を止めてフリーランス・ジャーナリストをやり始めた。

本澤 
しかし中曽根さんはかつて著名な女性金庫番がいましたからそういう世界にいるとは思えない。

藤原 
いやいや、両刀使いがいっぱいおり、むしろそれが当り前。最近、岩瀬達也が『新潮45』に松下幸之助のことを少し書いているが、彼は奥さん以外の女性のことにふれているものの、他の女性ではなく若衆を相手にする世界には触れていないのが惜しかった。つまり、松下政経塾があってPHPはある意味、幸福○△党と同じでカルトといえる。

◆本質は改憲軍拡派

本澤 
今のお話は何か分るような気がする。僕も政経塾を取材するまではPHPのことは分からなかった。取材を進めていくと本丸はPHPで、そこから永田町へ指令が出ると、今の国対委負長のように自民党にもOBがいるから、民主、自民双方に指令が届く。ですから政経塾は絶対に超保守から外に出ない。実際、民主と自民それ以外にはいない。
 特に調べていくと、心配になってきたのは、われわれ流に言うといわゆる改憲・軍拡派。戦争に加担する側、軍事産業とのつながり、前原が特にそうですね。それとワシントン右派とのつながりが非常に強いことが分かった。リベラルでは全然ない。前原はもちろん、野田もそうです、野田は最近、韓国で大騒ぎになったが、A級戦犯は戦争犯罪者ではないといって、怒りをアジアからくっていますよね。基本的に可成り偏向思想の人たちだ。だから僕は非常に心配なんです。

藤原 
そうした心配については日本を離れて外で見ていると、クリントン大統領も学んだワシントンのジョージタウン大学の中にある戦略国際問題研究所(センター・フォー・ストラテジック・アンド・インターナショナル・スタディーズ=CSIS)。ここは実は、ナチス思想のアメリカ版ゲオポリティークスの砦です。
 ジョージタウン大学はアメリカにおけるカトリック教会及び、イエズス会創設の最古の歴史を持つ大学で、日本ではそのヴァチカンのお目付け役としての上智大が、東京の中心の四谷にある。そこには日本の反動思想の扇動者の渡部昇一とか、保守思想の大家だった篠田雄一郎教授が輩出している。

本澤 
小泉元首相が、英語が得意というだけの理由で可愛がっていた女性議員(猪口邦子)もそうでした。小泉チルドレンの一番手で、初当選してすぐ大臣になった。上智大の教授でその後、復職した。

藤原 
上智はマッカーサー時代から占領軍の後押しがあり、あんな良い場所を確保している。
 そういう意味でCSISは、世界戦略の中心になっているが、そこに実は、京セラの稲盛和夫(稲盛財閥)が5億円(6億5千万ドル)を提供して理事に納まっている。

本澤 
(驚いて)そうですか。

藤原 
だから稲盛の関係で京都は皆CSISに行く。

本澤 
松下政経塾もですか。

藤原 
いえ、政経塾だけでなく、小泉進次郎もCSISの日本部長をやっていたマイケル・グリーンのラインでそこに入っている。

本澤 
成る程-。

藤原 
だからアメリカの対日戦略の拠点としてのジョージタウン大学は注目しなければならない。
 もう一つは、英国のアメリカ支配としてのコロンビア大学。進次郎はコロンビア大学からCSISに入っている。だいたい彼はコロンビア大学に入学できる力はなかったのに枠外で入った。ジェラルド・カーチス教授というジャパン・ハンドが一役かった。
 カーチスは日本に来て、大分県の佐藤文生の選挙を密着取材して「代議士の誕生」を博士論文に仕立てて日本通として認められるようになったが、実力的には?がつくような人物で、しかし、奥さんのみどり夫人が優秀だった。

本澤 
日本人ですか。

藤原 
もちろん。アメリカの対日関係者の奥さんは、ほとんどが日本人ですよ。

本澤 
成る程-。

藤原 
奥さんが優秀だと、その男は出世する(笑)。ライシャワーもそうで、ハル夫人は松方財閥のお嬢さんでした。とにかく日本の女性は凄いですよ。世界のいろいろな国で奥さんになってるから、子どもができればその子は対日専門家になる。世界のことを知らないからそういうことを調べた日本人はほとんどいない。もっとも、そうしたことを書くと人脈を断たれるのでアメリカにいる間だけは、危ういという理由もあって僕も書かなかった。

本澤 
対談に先だっての雑談で、藤原さんが日本はアメリカの属国ではなく、属領だとおっしゃったがよく分かりますね。

藤原 
なぜ属領かというと、例えばマイケル・グリーン。彼は大臣でも政府の高官でもない。CSISの日本部長だった。しかも、アメリカの対日要求を反映させるためのエージェントにすぎない。それにタコ入道のアーミテージだって国防次官補の属僚に過ぎません。
 もうひとつ、アメリカの重要な大学としてジョーンズ・ホプキンス大学がある。この大学はワシントンに高等国際研究所を持っており、そこのサナイエル・セイヤー教授の手引きで、1954年に中曽根が初めてハーバード大の夏期講座に参加した。その前にセイヤーはCIAのアジア太平洋部長だった。それが縁で中曽根はCIAとつながった。ただ、中曽根は正力みたいなおっちょこちょいと違い、コードネームももたないからアメリカの隠れエージェンシーとして出世するのに成功した。

本澤 
秘密の代理人みたいなものですね。

藤原 
そうそう。中曽根はそれで首相になれたわけですが、結局、ジョーンズ・ホプキンス大学の系列でもってハーバードのキッシンジャーのゼミに出席して、そこで洗脳されて、原子力の重要性をたたき込まれた。帰国後は、彼の伝記を読むと、手柄話として自分が原子力予算をつけたことを書いている。

本澤 
そうですね。

藤原 
正力がスパイになった同じ時期に、中曽根もアメリカに協力していたことがはっきりする。
 アメリカには外交官になる大学が2つあります。ひとつはジョージタウン大学で、外交官になるための学部がある。もうひとつは、ハーバード大学とタフト大学が共同で、外交官になるための大学院大学を持っている。そこの大将が日本大使になると予測が流れたジョセフ・ナイ教授です。

本澤 
あ~、ジョセフ・ナイ。成る程ねー。

藤原 
その事ひとつとっても、日本にはアメリカに対する研究機関がひとつもないから、本当の情報を知る人がいない。

本澤 
特にアメリカの情報はまったくないですね。

藤原 
アメリカにいる時には、僕もそんなことは書けない(笑)。だから適当にぼかしてヒントだけは書いてるから、分かる人には分かるんですが、日本人は自分で考えて絵を作る才能が残念ながらない。答を書いてやらない分からないわけですね。だから書評で飯を食っている立花隆や佐高信などは、私の本は敬遠して書評しようとしない。
 日本には謀略史観というのがあって、やれロックフェラーがどうだ、フリーメイソンがどうだとか出鱈目を書いているのを皆んな読んでいる。やはり自分でフィールドワークをしなければだめだ。

本澤 
確かにそうだ。

藤原 
取材をして、あるいは事件を知っている人が死ぬまで絶対に話さないというのを聞き出す能力が必要だが、そういう能力を持った新聞記者がいない。皆んなサラリーマンだし、下手に書くと消されてしまう。しかし、今回出した『生命知の殿堂』は世界で最初のカミトロニクス書籍で、従来の紙の本と電子本を組み合わせて、情報を行間と遠近法で読み解くようになっている。だから、パソコンで開くと、そういう記事が全部出ており、紙には書けなくても2~3年先には世界中の半分はカミトロニクスになると思う。

◆稲盛財団が資金を

本澤 
今の話と関連すると思うが朝日新聞の阪神襲撃事件で記者が殺されましたよね。事件の犯人が「俺がやった」と言って出てきてその後、週刊新潮に2~3回連載された。しばらくすると俺が犯人だという人物の核心は、自分は頼まれてやったんだと。頼まれた先はCIAであると仄めかすわけですよ。そうすると途端に週刊新潮が謝罪文を載せて、その本人は分けの分からない形で死んじゃうわけです。僕は完全に消されたと思っているんですが、それで何んとなく、CIAはますます日本では恐怖の対象にされてしまう。

藤原 
CIAというのはわれわれ自由人と違って、役人として優秀な人が多く知識を一杯持ってる。しかし、実際に自分でフィールドワークしてやっている人は本当に少ない。例えば「CIAは何をやったか」を書いたベアーみたいな人物はやはり組織の硬直性に愛想を尽かして辞めている。官僚組織と優秀な人とは合わないからですね。官僚組織にいるのは頭が良く日本の役人と同じで、退職金を一杯もらい、天下りするという人が多い。
 そのことはさておき、CSISの話に戻すと、例えば、国務長官のヒラリー・クリントンとかブレジンスキーとか、あるいは、国防副長官をやったリチャード・アーミテージのように、アフガン戦争の時にパキスタンに行き大統領に向かって「協力しなければパキスタンを石器時代に戻してしまうぞ」と脅すような、倣慢な奴が集っている。
 ただ、ここで何故、稲盛がCSISに基金を提供して、CSISの中に「アブジャイア・イナモリ・リーダーシップ・アカデミー」を作ったことに触れる必要がある。アブシャイヤーはCIAと関係の深い諜報の専門家で、レーガン時代にNATOに大使として派遣され、ミサイル問題に精通していることで知られてくいる。しかも、CSISはナチスの生存圏の思想を作った、ハウスホーファーの思想を米国に輸入する目的で、イエズス会のジョージタウン大学に作られたシンクタンクとして、地政学に基づく世界戦略を展開している。松下政経塾-稲盛財団-ナチスの親衛隊の思想という、こんな不気味な構図が見え隠れしており、ヒムラーが作った親衛隊の組織構成は、イエズス会を手本にしていることは良く知られ、近代化がゲシュタポを育てた事実が気がかりです。
 また、ハウスホーファーという人物は、日露戦争の頃に日本に駐在武官として来ているが、彼はドイツの地政学者でミュンヘン大学の教授だった。その弟子が副総統になったルドルフ・ヘスであり、彼はヒトラーの『わが闘争』の口述筆記をしただけでなく、メッサーシュミットで英国に飛んだ奇妙な行動をしているが、ヘスは渾名が「お嬢さん」でホモとして知られている。そういう流れを辿っていくと、ナチスの分派が日本に流れてきて、松下政経塾になり、稲盛財団になる。こういう大変な状況が起きていることを、日本で書けるジャーナリストがいない。
 日本では松下政経塾の首相が誕生したという程度の扱いだが、これは大変なことなんですよ。

本澤 
外交面でも外交戦略面でも当然、影響が出てきますね。

藤原 
野田という男が最初に現われてきたが、これからはアメーバーのような奇妙な連中がぞろぞろと現われてくる。

本澤 
稲盛がね……。我々には稲盛のイメージは悪くなかったのですがね…。



-総括なき国の行末には未来はない―

◆松下政経塾政権の本質
本澤 
ナチス思想と人脈がワシントン経由で松下政経塾と稲盛財団につながったという藤原さんの見方からいくと、松下政経塾の初代内閣の今後が心配されあるいは内外政策においてどんな事が予測されますかね。

藤原 
中田宏前横浜市長は皇国史観の信奉者で、「つくる会」の教科書を採用した。神奈川県の前知事松沢成文も政経塾の出身者でした。

本澤 
政経塾はつくる会ともくっついている。

藤原 
そうすると、横浜市で育った人間は完全にそういった思想、考え方を持つようになる。そういう人間が神奈川に始っていろんなところから出てくる。

本澤 
横浜の前市長、中田宏は狂信的だったし、東京・杉並区の山田宏前区長も皇国史観教育を進めている。

藤原 
そうした動向は、きちんと調査、整理して一冊の本にする必要がありますね。

本澤 
そうですね。僕は韓国のインターネットでそれをチェックした。確かに指摘されるようなつくる会と政経塾の癒着、これは埼玉県でも同じようなことがある。現知事の上田清司は、政経塾のOBではないが、民主党時代(衆議院議員)に政経塾とくっついた。ですから埼玉県の教育政策は、矢張りグニャグニャになってきています。そして東京には超右翼の石原知事がいる。

藤原 
知事は全都道府県に何十人もいる。それから国会にも自民と民主に分かれて政経塾のOBがいるわけだし、結局、あなたがPHPが司令塔だと言ったけど、まさに台湾派と繋がっている。

本澤 
そうですね。

藤原 
台湾の国粋派の国民党は、皆、サンケイ(産経新聞)と繋がっているし、李登輝は、本をPHPから出版している。小林よしのりとの対談も出している。 PHPは、金がいくらでもあるから外に向って使い、国民党をPHPの虜にし、世界の反動、極右やモサドとも繋がっている。

本澤 
確かに、民主党の政経塾OBを調べた時に分かったのは、彼らは皆、台湾派だ。中国に行って中国の悪口をガンガン言う。 彼らは、口舌の徒として訓練されているから、自民党の右翼よりもやり方が上手い。一見すると何んとなくごまかされてしまうが、冷静に分析すると、やっていることば正に極右そのものだ。 松下(パナソニック)の莫大な広告費で、新聞、TVなどのメディアは一切、報道しない。本当に恐い時代になっている。昔は、自民党の中にはリベラル派が存在してブレーキ役になっていたんですけどね。

藤原 
宇都宮(徳馬)さんなんかがそうだった。僕も個人的によく知っていた。

本澤 
僕も徳馬さんから一番影響を受けた一人です。記者になって最初に担当したのが〝大平派″だった。大平派は歴代リベラルでした。リベラルの特徴は 〝寛容″ の価値観を非常に重視する。一方、ネオコン、右翼というのは寛容性がまったくない。相手を敵にしてとことんやつけちゃう。自民党にはそうした右翼の他にリベラルが存在していたからバランスが取れていた。それが小泉時代からリベラルがいなくなり超右翼になった。そして民主党の中では鳩山(由紀夫元首相)、小沢(一郎元党代表)系のリベラル派を、政経塾系が撃滅した。

藤原 
そうした流れの中にホモ人脈なるものがある。

本澤 
しかし、その視点はわれわれにはまったく想定外のことでしたね。だいたい、女性秘書を彼女にして金庫を任せているケースが多いので、ちょっと想像できないですね。

藤原 
男同士なら外に秘密が漏れないから・・・。

本澤 
成る程、秘密保持。言われてみると納得できる。

◆メディアもアメリカ追随

藤原 
実は、それは英国が得意とすることで、苦からアメリカは、英国のノウハウを真似しているだけだ。 例えば、ローズ・スカーシップという、英国帝国主義の支配者の番犬を育てるために、アメリカ人と英国のコモンウェルズの中だけから選んで、オックスフォードで教育している。それを真似したのがフルブライト奨学金です。日本人でも可成りフルブライトで洗脳されて帰ってきているのがいる。小田実のようにべ平連で活動した者もいるし、いろいろ面白いのがいる。竹村健一もフルブライトをもらって米国の広報マンだった。 奨学金の流れの中で、逆に稲盛財団はそこに金を渡して日本から送り出し、洗脳されて帰国する。

本澤 
自民党の高市早苗も超右翼で、アメリカの政治家の秘書までやったと、肩書きにありますね。

藤原 
それにコロンビアとジョージタウンは、それぞれ5パーセントの特別が粋があって、声をかければ入れてくれる。小泉進二郎も、能力とはまったく関係なくコロムビアに入れた。

本澤 
彼はたしか関東学院大学中退だったらしいですね。親(小泉元首相)が離婚したりして家庭が複雑だったり、いろいろ事情があったんでしょうが、とにかく勉強が大嫌いで、いってみればまともじゃなかったらしい。だいたい、政治家のセガレでできの悪いのはみなアメリカ留学だ。安倍晋三もその一人ですね。

藤原 
それを暴露したのが霍見芳浩だった。民主党最高顧問の渡部恒三の息子の恒雄もジョージタウンで教育を受けている。

本澤 
渡部恒三のセガレがジョージタウンですか。

藤原 
そう。だから渡部恒三は、水戸黄門とかなんとかいって、徹底的に小沢一郎を叩く側についている。

本澤 
渡部の小沢叩きはジョージタウンの流れですかー。

藤原 
誰がどこへ行っているのかをそれぞれ見たら分かるのだが、そこまで日本の週刊誌、新聞には書く人がいない。

本澤 
完全にアメリカナイズされているわけだ。

藤原 
しかも、アメリカには大学だけでなくシンクタンクもあり、そこで洗脳される。その典型的な例がバーグステインのアメリカ国際経済研究所だ。実は、そこに客員研究員として留学していたのが朝日新聞の船橋洋一だ。

本澤 
(納得したようにうなずきながら) あ~-。

藤原 
特に朝日の政治記事がおかしくなったのは、船橋以降ですからね。

本澤 
CIAリストに載っているというインターネット情報も出てますね。

藤原 
アメリカ国際経済研究所で船橋と同僚だったのが竹中平蔵。2人は「IT革命」という共著を出している。

本澤 
へえ~、あら、あら、ですね。

藤原
 僕は日本人がどうして気が付かないのか、と思っているが、誰れも書かない。

本澤 
知らなかったですね。是非活字にして欲しい。 朝日が急におかしくなって、僕は朝日の講読を止めた。友人の政治家は、記事が余りに酷いために東京新聞にしたが、当時朝日を止めたという人が周りに一杯いた。 今の話で思い出すのは、日本記者クラブで前のアメリカ大使がさよなら記者会見をやった時に、船橋が、大使をべ夕褒め、礼賛するような紹介をするんで、この人は新聞記者じゃないと思いながら聞いたことがあった。彼の弟子たちが、今も幅を利かしている。

藤原 
船橋は最初、ニーマンフェローでハーバードに行っているんです。ニーマンフェローは将来、編集長とかトップに近くなる人をアメリカがスカウトする。その後、彼はアメリカの総局長になったが、その時に、たしか1989年だったと思うが、「通貨烈々」という本を書き、朝日新聞から出している。その「後書き」を読むと、バーグステン所長に対して感謝感激雨霰のことを書いている。アメリカ総局長ともあろう人がとんでもないと思った。 バーグステン所長は商務長官を勤めたピーター・ピーターセンの子分で、ピーターは正にデービス・ロックフェラーの後を継いだ、アメリカの対外政策を進めるCRF(外交問題評議会)の中心人物。リーマンブラザーズの会長もやっているし、今は潰れかけている投資ファンド、ブラックストーンの創設者でもあり、日本を喰い荒らしている。ソニーに甘い話を吹き込んでコロンビア映画の買収を進めたのも彼だった。日本は彼らに弱味を握られており、知らないのは日本人だけで、北京も台湾、韓国もみな知っている。

◆日本はアメリカの属領

本澤 
上海の名門大学、 復旦大学には、もちろん日本研究所もあるが、アメリカ研究をやっているアメリカセンターは一番立派な建物で、さすがに中国ですね。

藤原 
僕は今から二七~八年前にカリフォルニアの保守的なぺパーダイン大学で総長に頼まれて顧問を3年程やったことがある。その時に北京大学をはじめ世界中のいろいろな大学の総長、学長を訪問したが、1980年代ですから当時はまだ中国は貧しく、何もない時代でやたらに奨学金や招待を要求された。結局、アメリカは日本を全然問題にしていない。アメリカにとっては矢張り中国の市場は大きく魅力的だ。英語も話せるし、人材も沢山いる。
一方、日本はモノを作って輸出していたから経済大国と威張っていたが、アメリカからは全く評価されていなかった。 
結局、中曽根が首相になった頃が絶頂期で、ヤクザ政治とカジノ経済で、バブル経済が弾けた後は20年間、全く成長していない。GDPだって過去20年間、一銭も増えていない。そういうなかで中国にIBMがコンピュータの会社まで売ったのだから戦略的にどう考えても合わない。それほど日本はバカにされているのに、日本人は気が付かない。松下政経塾レベルの連中がアメリカへ行って洗脳されて、日本に帰国してやっているから完全に属領扱いだ。 
そういう中で日本の現在の落ちぶれている状況が生れている。アメリカにしてみたら、日本の中でも四流、五流のどうしようもない人物が首相になっているのだから正にカモだ。これから出て来るのは前原のように、もっと悪い洗脳された売国政治家だ。本当に救いのない国になってしまった。

本澤 
救いがないですよね。京セラの稲盛にしても、僕らにとってはこれは新発見ですね。稲盛財団がアメリカの大学に500万ドルですか…。

藤原 
そこは(CSIS)ナチスの研究、ナチス地政学。ヒトラーは生存圏を獲得する目的で、ロシアに行ったり東欧を攻めた。その侵略戦争推進者のハウスホッカーの拠点で、最近の政治家は学んできている。

本澤 
それだけに〝国民〟という視点がどうしても抜け落ちてしまう。その結末として福島原発が大爆発した。

藤原 
これからは、ナチスを学ぶ松下政経塾の政治がどうなるかが焦点になってくる。

本澤 
松下政経塾は、思想的な部分で、今おっしゃられているようなナチス的、カルト的というか、何かいかがわしさが、アメリカとの結びつきのなかで分かり易く理解できたわけですが、ひとつの財閥がその資金力によって、政界とそしてわれわれが何時も忘れがちな霞ヶ関、つまり官界、僕は官閥と呼んでいるが、実は、この官僚が一番ワルでして、政経塾はしたがって、その官閥とくっついている。財閥、官閥そしてワシントンという三角型が民意とは無関係な形で内外政策を出してくる。 
そうすると、われわれが今、一番心配している原発の処理問題、これは収束なんかできっこない。特に、僕の個人的な思いもあるのですが、東芝です。東芝製の福島3号機はプルトニウムを使っている。プルトニウムは半減するのに2万4千年かかるといわれているが、これが今、地下水と海水に流れている。これに蓋をかける役割を今の政権は担っている。 昨日(8月31日)、経団連の財閥出身の会長が、野田政権に感動するようなメッセージを出していることでも頷ける。身内の政権ができたという思いなんでしょうね。
つまり、政経塾は、松下の代弁者のみならず財界、財閥と一体の政権だ。真の意味での日本の国民であるという視点が、当然ながら欠落している。 特に僕は、1972年の日中国交正常化の時に、政治記者になって初めてアジア、中国と向き合ったという印象が強いわけですが、あの時は「アジアの平和と安定」が原点だった。
台湾は別として、その基本理念と衝突する政権ができてしまった。日本は東アジア共同体という形でなんとか盛り上げれば、新たな繁栄に向けた日本再生のきっかけを作れる筈だが、政経塾政権はこれに全く関心を示していない。ワシントンの言いなり。中曽根、小泉政権の傀儡といわれる所以ですね。

藤原 
そこで福島原発爆発の背後に、基本的に何があったかを考えることが大切だ。

◆原発の真の目的は?

藤原 
福島原発爆発は、日本におけるエネルギー政策の破綻といえる。1950年代は石炭を使っていたが、60年代になって三池事件で石炭から石油に変わった。その頃に平和利用の名目で原子力に着目したのが正力と中曽根。 通産省(経済産業省)としてはまだ、石油がこれから大事になるからとして、石油メジャー(日の丸石油)を作ることに熱心だった。ところが、岸信介がインドネシアの利権と関係して、日石カルテックスから輸入する石油の2パーセントを完全に口銭としてもらっていた。

本澤 
新橋の日石ビルに個人事務所を構えていたので、彼が石油利権でメシを喰っていたことばよく分かります。

藤原 
彼は狡猾なので田中角栄のようなヘマはやらない。自分の名前が出ないようにロンダリングを上手にやっていた。角栄は石油に価値があると見て、財界の資源派といわれた中山素平、今里広記らを周りにおいて、石油にのめり込んだ。南米からアメリカ、カナダやアラスカと、いろいろ画策し、通産省も石油を通してエネルギーで独立したかったのでしょうね。今里がアラスカ石油を創っていたが、ある時、ブリティッシュ石油が、国有化されるということでアブダビ海上石油の利権をドイツのデミネックスに2億ドルで売りに出したら1億ドルなら買ってもいいという話になった。
ところが日本の石油公団が何んと7億8000万ドルで買ってしまった。相場の8倍。今里と田中清玄がやったわけだが加えて通産省内の派閥争いもあったりで、角栄が石油で躓いてしまった。その頃、田中も中曽根も通産大臣をやっていました。

本澤 
そうですね。田中の後に中曽根がやっている。田中内閣が誕生すると、中曽根が真っ先に要求したのが通産大臣のポストだったですね。

藤原 
1973年の時は、田中が首相で中曽根が通産大臣。結局、中曽根は石油はやりたいがアメリカに押えられているので、利権化は無理だと諦め、代わりに着目したのが原子力だった。
核武装するためにとりあえずエネルギーという形で、原子力発電所を強引にどんどん作り出し始めた。だから原発が日本で一番できたのは中曽根時代だった。万一の時はプルトニウムさえあれば原爆はできる。

本澤 
確かに、弟子である与謝野馨を原子力関係の企業に押し込んだ。そこで原子力の研究を始めたから、今でも原発は必要だと吹聴している。中曽根の心中には、常に安全保障の面からの原発で、それ故プルトニウム、もんじゅが必要だった。彼は核武装論者ですからね。

藤原 
プルトニウムは茶さじ一杯で一度に数百万人を殺せる。

本澤 
数百万ですか(驚く)。

藤原 
それが日本には45トンもある。いざとなったら日本は核武装すると、韓国や中国の新聞に書いてある。

本澤 
キッシンジャーも、中国に行って「日本はいずれ核武装するだろう」と言っているが、彼は中曽根の本心を見抜いていたわけですね。

藤原 
いや、むしろキッシンジャーから「お前は核武装をやれ」と言われていると見た方がいい。アメリカにしてみれば、日本が被爆してくれたらこんな有難いことばない。今度の福島事故でも友達プロジェクトときれい事を言っているが、あれは日本を助けるためではなく、アメリカとして万一、核爆発があった時の対応のためのデータを集めているにすぎない。アメリカの常套手段だ。 
日本人は、福島原発の爆発事故をエネルギー政策の失敗と位置づけて見なければいけない。 
では、石炭から石油、そして今の主力となっている天然ガスの後には何がくるかとなると、水素ガスしかない。ハイドロカーボンという一つのシステムの中で、最初は木だったものが石炭になり、石油になり、天然ガスになり、次に水素ガス、このパターン以外エネルギーはない。
原子力は一見すると発電コストが安く見えるが、それはウラニウムを買って発電した間の計算であって、ウラニウムの開発費用、運転した後のゴミの処理費用などは計算外になっている。

本澤 
最近、通産省OBでみんなの党の江田憲司幹事長が記者会見で、原発は無用の長物だから途中、天然ガスなどで中継ぎをしてゼロにし、解体すべきだと発言していた。電力の自由化を進め、あちこちに小さな発電所を建ち上げ、発送電を分離すれば脱原発は可能だというのですね。

◆増税は国を亡ぼす

藤原 
日本は過去25年間、人材を育てなかったので、本当に人材がいない。 今度、野田さんは増税すると言っているが、増税すると国が潰れてしまう。増税するのであれば、今まで目溢ししてきた宗教団体やパチンコ、競艇などギャンブル事業などから徴収すれば、まったく増税する必要がない。

本澤 
日本がここまで陥ち込んでしまったのは、実は、中曽根内閣時代の1985年に日米同盟の名のもとのプラザ合意で超円高政策を受け入れたことに始まる。それがバブル崩壊で1500兆円が消えた時点で経済大国失墜。その後は延々と20年間、借金、借金できたのに、霞が関の官僚政治、そこを総括せず、誰れも責任をとっていない。

藤原 
それはエネルギー政策も同じだ。民主党は自民党の出鱈目政策を総括していたら、少しはましなことができたかもしれないのに、民主党はネオコンに乗っ取られてしまった。

本澤 
日本沈没の何ものでもないのに、そこに大震災と原発の大爆発ですからね。

藤原 
しかも、債務残高というのがある。日本は対GDP比率で200パーセントを超えている。こんな国は世界にない。アメリカだって100パーセントを超えていない。ヨーロッパ諸国は60パーセント台だ。

本澤 
それでギリシャの問題が起きているが、ギリシャは最後にはEU諸国が支えてくれる。しかし、日本は誰れも支えてくれない。これで今、アメリカがガタガタになってドル暴落になったら日本は完全にアウトですね。

藤原 
しかも、財務省は増税すれば問題が解決すると、寝ぼけたことを言っている。たしか2002年だったと思うが、アメリカで「ネバタ・レポート」というのが出た。

本澤 
ありましたね。

藤原 
このレポートでは、日本の財政は破綻しているから、まず国家公務員の給料を3割カット、退職金はゼロにする。そして、預金の4割を財産税として没収するとか、株の取引に課税するなどいろいろなことが報告されていた。 
実際問題として今必要なのは、増税ではなく、国会議員や国家公務員の歳費や人数を半分にするといったことから始めたらいいのに、政治家や役人は自分のことは全然やろうとしない。民主党が政権をとった時のマニフェストにも、そういうことが揚げられていたはずなんだが…。

本澤 
そう、役人の大リストラをやると約束した。自公政権がやってきた予算編成にも真っ向からメスを入れると約束したはずだが、それもやっていない。それが弱い者いじめの消費税の増税ですからね。 銀行がパンクした時、国民の負担によって救済されたが、今メガバンクとそれに繋がっている巨大企業、財閥はそれこそ数百兆円も内部留保を保有しているのに、国民のために使うという発想は全くない。

藤原 
さらに、日本が円高、増税となれば企業がどんどん逃げていくと、いよいよGDPが減っていき大学卒でも半分以上が失業するようになる。

本澤 
社会が混乱して日本にだってテロが起きるスキ間が出てくる可能性がある。

藤原 
国民を大事にするうえで明治維新をみると、富国、強兵から経済大国という流れになってきたが、実は、横井小楠という人は、それに 〝士道″ ということを「国是三論」 でいっている。
士道とは国民を大事にする志ざしであり、士道・富国・強兵の3つでバランスがとれるのだが、士道を除いて富国強兵だけが残り国民のための経世済民がない。

本澤 
明治維新以来今日まで、国民が欠落した政治が続いてきたわけですね。まさに官僚政治だ。

藤原 
日本は民主国家になっていないばかりか、民族国家にもなっていない。〝民族″ 国家とは、権力と人民との間が契約で成り立っており、権力と人民が社会契約したのが憲法で、それが民族国家の原点なのだが、日本はまだその域に達していない。

本澤 
最近、国際社会で有名なヒューマン・ライツ・ウォッチから戦争犯罪者を研究したレポートが出ているが、それによると、過去20年間を調べてみれば、戦争犯罪の責任者を政治的な理由で処罰しないでいると、その国はまた元に戻るという研究結果を出している。日本も66年前に同様のことをしたので元に引き返しているわけですね。

藤原 
総括もしていないから全然変っていない。そんなパターンが今の日本といえる。今の日本に必要なのはリーダーシップと「さらば暴政」の精神ですよ。  
(転載了)




藤原 肇
ふじわら・はじめ
http://seiryupub.sakura.ne.jp/author/name/post-11.html
1938年(昭和13年)、東京生まれ。グルノーブル(仏)大学理学部博士課程修了。構造地質学専攻、理学博士。多国籍石油会社で世界各地において仕事をした後、アメリカのカンザス州、テキサス州で石油開発会社を創設して経営。ペパーダイン大学総長顧問として、人材育成計画を担当したのを始め、世界を舞台にコンサルタントとして活躍。
40代初期にビジネスから引退して、国際問題のコメンテーターとして幅広い視野で発言を続ける。現在はアメリカの資本主義崩壊を見届けたので、25年住んだアメリカを去り台湾に移り、「慧智研究センター」(RICW)の所長として、地球の環境問題と人材育成に取り組んでいる。

 主要著書に『石油危機と日本の運命』(サイマル出版会)、『日本不沈の条件』(時事通信社)、『日本脱藩のすすめ』(東京新聞出版局)、『アメリカからの日本の本を読む』(文藝春秋)、『平成幕末のダイアグノシス』『オリンピアン幻想』『経世済民の新時代』『宇宙巡礼』(以上、東明社)、『間脳幻想』(東興書院)、『夜明け前の朝日』(鹿砦社)、『ジャパン・レボリューション』(共著・清流出版)、『藤原肇対談集―賢く生きる』(清流出版)、『賢者のネジ』(たまいらぼ出版)、『小泉純一郎と日本の病理』(光文社)他多数。