〜陰陽思想〜
この思想は森羅万象(しんらばんしょう)といった無限の空間と時間の広がりや、宇宙に存在する全てのあらゆるものをいろいろな観点から「陰」と「陽」というふたつのカテゴリーに分類思想です。「陰」と「陽」はお互いに対立する属性を持った「気」で、その「気」が万物の生成消滅という変化をもたらすという思想です。
この陰陽思想では最初は混沌としたカオス状態だと考えて、混沌とした中から光に満ちた明るい澄んだ「気」、つまり「陽の気」が上昇していき天となって、重く濁った暗黒の「気」、つまり「陰の気」が下降したことで地になったという考えです。「陽」と「陰」というふたつの「気の働き」で万物の事象を理解するだけではなく、将来も予測(占い)してみようというのが陰陽思想になります。
陰陽思想では、陰が悪ではなく陽が善でもありません。その点が善悪二元論とはまったく違っています。陽は陰があって、陰は陽があってそしてはじめて一つの要素となるという考えです。もともと陰と陽は天候と関係する言葉でした。そのため、「陰」は曇りや日影で、「陽」は日差しや日向の意味として古書の『詩経』などでも表れています。
孔子が編纂したと伝えられている歴史書の『春秋左氏伝』の中に、昭公元年:紀元前541年に天の六気として書かれているのが「陰・陽・風・雨・晦・明」となっています。
ここで陰陽は寒暑の要因と考えられていて、また昭公四年:紀元前537年には「陰・陽・風・雨」が、気候の要因として季節を特徴づけるものとして扱われています。
さらに法家の書物の「管子」の幼官では、明確に四季の気候が変化する要因として、春の燥気・夏の陽気・秋の湿気・冬の陰気といったことは寒暑の原因とされと四季が変化する要因として扱われています。
そして、これららがやがて四時の「気」を統轄する上位概念となって、さらには万物の生成消滅といった変化全般を司る概念となり、万物の性質を「陰」と「陽」の二元に分類するという概念へと昇華していったのだと考えられています。
陰陽思想の特徴
- 陰陽互根・・・陰があれば陽があって、陽があれば陰があるように、お互いが存在することで己が成り立つ考え方です。
- 陰陽制約(提携律ともいう)・・・陰陽がお互いにバランスをとるように作用します。陰虚すれば陽虚して、陽虚すれば陰虚します。陰実すれば陽実して、陽実すれば陰実します。
- 陰陽消長(拮抗律ともいう)・・・リズム変化で、陰陽の量的な変化です。陰虚すれば陽実して、陽虚すれば陰実します。陰実すれば陽虚して、陽実すれば陰虚します。
- 陰陽転化(循環律ともいう)・・・陰陽の質的な変化です。陰極まれば陽極まって、陽極まれば陰極まります。
- 陰陽可分(交錯律ともいう)・・・陰陽それぞれの中に、様々な段階の陰陽があります。陰中の陽、陰中の陰、陽中の陰、陽中の陽です。
〜五行思想〜
根底にあるのは5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えになっていますが、一説によれどうして5つの元素としていたのかというと、その当時の中国で、5つの惑星が観測されていたためだといいます。その当時から知られていた「惑星」の、水星・金星・火星・木星・土星の呼び名はは五行に対応しています。
概念
5種類のエレメント(基本要素)として「木・火・土・金・水」の元素が自然現象に相互作用を与えるというだけではありません。変化の中でも5種類の状態・運動・過程といった捉え方もされています。その他に、政治体制・占い・医療・自然周期といった概念の捉えかたもされています。
- 木:木行・・・春の象徴で、木の花や葉が幹の上を覆っている立木が元になっています。樹木の成長や発育する様子を表します
- 火:火行・・・夏の象徴で、光り煇く炎が元となっていてます。火のような灼熱の性質を表します
- 土:土行・・・季節の変わりの象徴で、植物の芽が地中から発芽する様子が元となっています。万物を育成・保護する性質を表します
- 金:金行・・・秋の象徴で、土中に光り煇く鉱物・金属が元になっています。金属のように冷徹・堅固・確実な性質を表します
- 水:水行・・・冬の象徴で、泉から涌き出て流れる水が元となっていて、これを命の泉と考え、胎内と霊性を兼ね備える性質を表します
〜陰陽五行思想〜
気功を理解するためには「陰陽五行思想」(いんようごぎょうせつ)といった思想を知ることが大事になります。これは中国からの鍼灸や按摩そして風水もすべてこの陰陽五行の思想がベースになっているからです。
この思想の歴史は中国三千年の歴史ではありませんが、中国が春秋戦国時代の時に生まれた思想で「陰陽思想」と「五行思想」が組み合わさって生まれた思想が「陰陽五行思想」になります。
太極図が表しているのは「陰陽思想」ですが、「五行思想」のは木・火・土・金・水の5種類の元素から万物がなるということが結びつくことで、より複雑な事象の説明ができるようになりました。
古代中国神話に登場する帝王「伏羲」が作り出したものが「陰陽思想」になっていて、全ての事象は、それだけがただ単独で存在するのというのではなく、相反する「陰」と「陽」という形で存在して、それが消長をくりかえすという思想です。このそう反するものには「明暗」「善悪」「天地」「男女」「吉凶」など)といったものが相反するものになります。
その一方で「五行思想」は、夏の創始者の「禹」が発案したもので、万物は「木火土金水」という五つの元素もしくは要素により成り立つとしているものになります。
(参考図)
相生(ごぎょうそうじょう):五行相剋(ごぎょうそうこく)
五行思想の特徴としてあげられるのは、「相生(そうじょう)」と「相剋(そうこく)」という、それぞれの要素同士がお互いに影響を与え合うという考え方です。
お互いが相乗効果をもたらして、良い相性を生んで、お互いの影響を強めあたるこものが「相生」になります。相手の要素を抑え、弱める影響を与えるものを「相剋(そうこく)」といいます。弱めるから悪いという捉えかたはしません。バランスを取るために弱めるといった捉え方をします。
〜五行相生〜
「木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず」という関係を『五行相生』といいます。木は燃えて火になります。そして火が燃えたあとには灰(=土)が生じて、土が集まり山となった場所からは、鉱物(金)が産出します。金は腐食して水に帰ることで、その水は木を生長させる。というような考えになります。
「木→火→土→金→水→木」の順に、相手を強める影響をもたらすということが「五行相生」の考え方になります。
〜五行相剋〜
「水は火に勝(剋)ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ」という関係を『五行相剋』といいます。
水は火を消します、そして火は金を溶かして、金でできた刃物で木を切り倒します。木は土を押しのけて生長して、土は水の流れをせき止める、というように、水⇒火、火⇒金、金⇒木、木⇒土、土⇒水 このように影響を与えて、弱める影響を与えるということが「五行相剋」の考え方になります。
(参考図)
〜陰陽五行説の暦〜
陰陽五行説やまたこれを基にしている占いでは、一年の始まりを立春としています。そして月の始まりも1日ではありません。二十四節気のうちで、月の前半に来る十二の節(年によって違う概ね5~8日)が月の始めになります。
このようにして、節から次の節の前日までの間を1か月とする月の区切り方を「節切り」といって、その月を「節月」や「月の節入り」といいます。
歴
立春(りっしゅん):正月節・・・新暦2月4日頃 (中国では立春の日に春餅を食べる習慣があります。日本は一番寒い時期で、気温が上昇傾向になるのが立春です)
啓蟄(けいちつ):2月節・・・新暦3月6日頃 (冬眠していた虫が穴から出てくることです)
清明(せいめい):3月節・・・新暦4月5日頃 (いろいろな花が咲き、すがすがしく美しい時期です)
立夏(りっか):4月節・・・新暦5月5日頃 (夏の気配を感じる時期で、この日から立秋の前日までが夏です)
芒種(ぼうしゅ):5月節・・・新暦6月6日頃 (西日本では入梅の頃です)
小暑(しょうしょ):6月節・・・新暦7月7日頃 (梅雨明けが近づいて本格的な暑さになることです)
立秋(りっしゅう):7月節・・・新暦8月7日頃 (秋の気配がでるころですが、暦のうえではこの日が暑さの頂点となる日です。この日の翌日から残暑になるので暑中見舞いから残暑見舞いになります)
白露(はくろ):8月節・・・新暦9月8日頃 (大気が冷えてきて露が出来始める時期です)
寒露(かんろ):9月節・・・新暦10月8日頃 (菊が咲き始めて、雁などの冬鳥が渡ってくることです。この頃にはこおろぎは鳴きやみます)
立冬(りっとう):10月節・・・新暦11月7日頃 (紅葉の見所はまだですが、この日から立春の前日までが冬になります)
大雪(たいせつ):11月節・・・新暦12月7日頃 (雪が降り始める頃で、冬の魚の漁が盛んになります。そして熊は冬眠に入ります)
小寒(しょうかん):12月節・・・新暦1月5日頃 (暦のうえでは、一番寒さが厳しくなる時期の前半にあたります。この日から寒中見舞いを出します)
陰陽五行説の十干十二支(じっかんじゅうにし)
陰陽五行説の基本には、五行の『木、火、土、金、水』(もく、か、ど、ごん(金はごんと読む)、すい)で、それぞれ陰陽2つずつ配します。
甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸、は音読みにすると、こう、おつ、へい、てい、ぼ、き、こう、しん、じん、き、と読みます。音読みでは陰陽と五行にどう対応しているか分かりにくくなりますが、訓読みにすると、きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと、となるので五行がわかりやすくなります。(かのえ、かのと、は金です)
陰陽は語尾の「え」が陽で「と」が陰になります。その語源は兄が「え」で、弟が「と」になります。そして「えと」の呼び名は、この兄弟からに由来しています。本来「えと」は、十干もしくは干支の呼称でした。
五行は十二支にも配されています。十二支に配される前提にあるのは、季節に対応する五行(五時もしくは五季)は、「春が木」「夏が火」「秋が金」「冬は水」になっています。では土は?となると、四季それぞれの最後の約18日(土用)になります。ウナギを食べるので有名な「土用の丑の日」は、夏の最後の時期(土用)の丑の日つまり「丑は土の五行」ということになります。
十二支の陰陽は、子から数えています。陽になるのは奇数番目で、陰は偶数番目になります。十干と十二支が組み合わさるときには、「陰と陽」の組み合わせはないので、「陽と陽」「陰と陰」の組み合わせだけになります。そのため、10×12=120にはならないので、半分の60通りになります。甲寅はあっても乙寅はありません。乙卯はあっても甲卯はありません。
十二支の五行
- 春・・・1月寅、2月卯、3月辰・・・五行:木、木、土
- 夏・・・4月巳、5月午、6月未・・・五行:火、火、土
- 秋・・・7月申、8月酉、9月戌・・・五行:金、金、土
- 冬・・・10月亥、11月子、12月丑・・・五行:水、水、土
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