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(以下転載)
アジアの世紀の鍵を握る客家の原像―その源流・文化・人物 (中公新書) (1996/05) 林 浩 |
客家の本を、何冊かとり上げてきましたが、客家の源流、文化、歴史に関する書は、初めてです。客家の背景には何があるのかを知りたくて、本書を読みました。
客家を詳しく知ることができ、参考になったところが数多くありました。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。
・宋朝が滅んでもモンゴルの元朝に降服せず、明朝が滅んでも満州族の清朝に屈服しなかったのが、中国のユダヤ人といわれる客家。5世紀以来、千数百年にわたって、多くの苦難を乗り越えてきた
・博士や教授を輩出したことで有名な客家の土楼の門の両側には、「奮起せよ、暇な時はない。幼い時も壮年時にも老年になっても、いつも努力せよ」「名をなすことは容易ではない。家事、国事、天下のことすべてに関心をもて」と彫ってある
・客家が多くの人材を輩出している原因の第一は、「家名をあげ先祖に栄光をもたらす」という強烈な心理や意識。第二は、「知識や教養を高め、教育を重んじて家を興す」という意識。第三に、客家がもつ「刻苦耐労、進取開拓」の奮闘精神
・6000万人の客家は現在、華南の丘陵地帯、南部沿岸と島嶼部、四川盆地、さらに、東南アジア、南アメリカ、インド洋島嶼部およびアフリカ南部の各地に、集団で暮らしている
・客家は自分たちの言葉を大切にする。各地の客家はみな「寧売祖宗田、不売客家語」(先祖の田畑は売っても客家語は捨てない)という古訓を尊ぶ
・客家語と日本語には、非常に多くの接点がみられる。古代日本語は、漢字の読み方を借りて、事物を記録した。客家は漢語の古音を保ち続け今日に至っている。当然、日本語と客家語は漢字の発音が近い
・おかゆや撈飯(水分の多い飯)のほか、客家人の食卓には、南方各地に見られる芋類がある。千数百年来、客家は芋類を栽培してきた。芋に対して、感謝の念を持っている
・客家の土楼は、単に住居として雨露をしのぎ、外敵を防御するという役目だけでなく、氏族の連帯感を高め、血縁と文化的伝統を保ち続ける役目を果たしている
・客家の精神生活を支配しているのは、「道教の神祇」、「仏教の神祇」、「漢民族・客家の神祇」の神々。他に、植物崇拝(風水林、巨木、椿、花神)、動物崇拝(亀、鶴、蚕、神話の中の蛟龍・鳳凰・麒麟)といった自然物を祭り拝み、災いを払おうとした
・「嫁をもらうなら客家の娘」、華僑社会では、昔からこの言い伝えがある。客家の女性がこなす重責として、「四頭四尾」(「田」田畑の耕作、「竈」台所仕事、「家」子供の教育・老人の世話・家計管理・掃除洗濯、「針」機織・裁縫・刺繍)の古訓がある
・客家人の間では、怠惰、ぜいたくな生活は恥ずかしいこと。「怠け女」は嫌われる。客家の童謡では、怠け女を痛烈に批判している
・客家の祠堂の前には、多数の「石筆林」(石材や木材の巨大な毛筆)がそびえ立つ。科挙に合格して名をあげる者があるごとに、その石筆を建てて栄誉を記念した。教育を重んじ、学問を尊んできた証拠
・客家の老人たちは、常々、子供たちに、「不読書、将来盲眼珠」(勉強しないと、物事の善悪を見分けられないよ)、「不読書、無老婆」(勉強しないと、お嫁さんをもらえないよ)と、教え諭した
・客家の子弟には、勉学のための座右の銘、「読読読、書中自有黄金屋」(読書だ!書物の中には黄金の家がある)、「読読読、書中自有千鍾粟」(読書だ!書物の中には高禄がある)、「読読読、書中自有顔如玉」(読書だ!書物の中には美しいお嫁さんがいる)があった
・客家の氏族の祠堂はみな、多くの共有資産をもっており、その資産の収入で学問を奨励している。貧しい家庭の子弟も、読書・勉学の道があり、文字が読めるようになる。これこそが、教育の機会均等
・客家は教育を重視するから、当然、知識人を尊敬した。客家地区では、教師、医師、風水師の三師だけが、「先生」と尊称されている
・客家を励まし開拓奮闘させた精神には、「外交型」「親和型」「倫理型」の特質がある
・客家は古来、「節」(忠を尽くすこと)を極めて重視してきた。「金銭は糞土のごとく、仁義は千金に値する」。客家の多くの人は、これを自己の行動規範としている
本書を読むと、客家の人たちに流れている血と伝統を知ることができます。世界中で、活躍している理由がよくわかります。
教育の奨励、倫理観の確立、先祖崇拝と相互扶助、これらをバックボーンとしている限り、これからもずっと繁栄し続けていくように思いました 。
(転載終了)
参考サイト
