小林です。
曰く、「人の欲は、人の価値を超えてはいけない」。
この言葉は、単に節制を説くものではなく、人の在り方そのものを問う言葉に思います。
欲は否定されるべきものではない。人が学び、挑み、築いてきた文明の多くは、欲という推進力に支えられてきた。しかし、その欲が人としての価値、、、尊厳や誠実さ、義や仁といった根本を超えてしまうとき、人は己を失い、他者を犠牲にしてしか生きられなくなる。
現代の人々はどうでしょうか。
便利さや快楽を求めるあまり、義よりも利を選び、誠実よりも効率を重んじ、他者の痛みに鈍感になりつつあります。
欲が肥大し、価値が痩せ細るとき、人は己の影を追いかけて深淵へと落ちていく。それは文明の進歩ではなく、退廃への道である。
人の価値とは、義を知り、分をわきまえ、調和を保とうとする力である。
また、欲は舟の帆のようなもの。
風を受けて進むためには不可欠だが、帆ばかりを大きくして舵を忘れれば、舟はたちまち転覆する。
欲を活かすのは人の価値であり、義と仁に根ざした心こそが舵となる。欲は価値を支えるものであって、決してその上に立つものではない。
そう思うのです。
そしてこの視点をもとに考え始めると、多くのことが実は「小事(しょうじ)」にすぎないと気づかされます。大事と思い込んでいた執着や争いも、やがて流れ去る一滴の泡にすぎぬのです。
その気づきの中に、人はようやく本当に広やかな世界を見出すのでしょう。
だからこそ今、欲が価値を覆わぬよう、自らを律する心を失ってはならないのです。
